Beyond Purgatory
Live at Pit Inn 2020
Release: April 2021 (Japan exclusive)
- 山中一毅– alto & soprano saxophones
Kazuki Yamanaka - 渡辺翔太– piano
Shota Watanabe - 落合康介– bass
Kosuke Ochiai - 大村亘– drums
Ko Omura
- Dancer in Nirvana
- Tears of Hiroshima
- Beyond Purgatory
- Reminiscence
- Behind the Scenes [ライブの舞台裏映像集]
All music composed by Kazuki Yamanaka
新宿ピットインにて2020年9月5日にライブ録音
Recorded live at Pit Inn on September 5, 2020
Liner Notes
2020年9月5日、この映像が撮影された日、筆者は新宿ピットインの客席にいた。山中一毅がニューヨークから帰国して、リーダーライヴを行なっていたからだ。ピットインは1965年に開店した老舗ジャズクラブだが、出演者の選出に定評があり、そこに出られるということは、それだけで日本で高い評価を得ているという証になる。
山中は、当時ニューヨークに拠点を置いていたから、彼を聴くには帰国を待つしかなかった。2020年3月から4月にかけて行われる予定だったセカンド・アルバム”Dancer In Nirvana”発売記念ツアーがコロナ禍によってことごとくキャンセルになっていたから、こちらも「今度こそ」という気持ちをもって聴きに行った。
山中一毅はグラウンディングし、自身の根を大地深くに下ろすようにしてから目をつむり、サックスを吹き始めた。その音色は無垢で気負いがなく、聴き手であるこちらの肩に入っていた余分な力をすっと抜いてくれた。
彼はジャズに対してまっすぐに向き合っていた。その作曲はマーク・ターナー以降のサックスに内在する知的な印象をもち、自身のアイデンティティと共に歩もうとする強い意志を感じた。音楽は難解ではないが、独自な感性が活かされていた。曲名と佇まいから”禅僧”のようなイメージを受けた。彼が音そのものと向き合おうとしていたから、その印象はあながち間違いではなかったかもしれない。温かみのある音色は、中学生の頃に両親から買ってもらったアルト・サックスから生み出されていると、後で聞いて知った。
(全文はブックレットに収録)
Artist’s Essay
山中一毅による書き下ろしエッセイ(約8000字)を以下の構成で収録
|序| なぜブルーレイ?なぜ文章なのか?
|破| おのれの音を探す旅
|急| 即興という旅
本作“Beyond Purgatory ~Live at Pit Inn 2020~”で初の映像作品をリリースする。初めてのライヴ録音の作品でもある。そしてまた、日本のメンバーとの録音物を作品にするのも初だ。世界がまたたく間に変わってしまったきわめて特殊な年、2020年に行われたライヴだ。
僕自身は3月にニューヨークから緊急帰国を余儀なくされた。音楽家としてかつてないほどいろいろなことを考えた年でもある。苦悩も多かった反面、新しい扉が次々に開いていく感覚もあった。思うような活動ができなくなるなかで、これまで考えもしなかった新しいアイデアがいくつも出てきた2020年。2021年はそれを少しずつ実現していく年になるだろう。
そういった一連の「新しい」何かの第一弾がこの作品のリリースだ。ライヴから遠ざかるリスナーが増えるなかで、少しでもナマに近いかたちで「ライヴ」を味わってもらいたい。だからこそブルーレイという最高の映像にこだわった。ピットインという日本のジャズの殿堂が醸しだす最高の空気感と臨場感を少しでもこの映像で体感してほしい。
本作品に込めるもう1つの新たなチャレンジは、いち音楽家・山中一毅の思索を「文章」で表現することだ。勝手ながら「物書きデビュー」をしてしまおうという魂胆だ。物を書くのは好きで、いつか何らかのかたちで書き物を出したいと考えていた。で、いつやるの?今でしょ!ということになったわけだ。僕は音楽家だが、この歳になって自分を表現するのに音楽だけにこだわる必要はないと思えるようになった。自分という人間がこの大きくも小さい、そして小さくも大きな世界に対して何ができるのか。あらゆる方法で自分をフル稼働していきたいと思っている。
とはいえ、何を書くのか?2021年というタイミングに35才の自分が書き残すべきことは何なのか。選んだテーマは「なぜオリジナルにこだわるのか」、そして「なぜ即興表現にこだわるのか」という2つ。どちらも重厚なテーマだが、この数年自分がもっとも大切に取り組んできたことであり、音楽家としての自分のアイデンティティだと感じていることでもある。今現在の自分が避けては通れないテーマだと思って決めた。
(全文はブックレットに収録)